EVENT

【開催報告】「日本創生に向けた人口戦略フォーラム ㏌ やまなし」

2025.12.19

人口減少という日本最大の課題への危機感を共有し、一丸となって対策に取り組もうと11月23日、「日本創生に向けた人口戦略フォーラム ㏌ やまなし ~若者・女性にも選ばれる地方になるために~」が甲府市内で開催されました。
フォーラムでは、人口減少対策を多角的に議論。
「関東ブロックから日本創生に向けた人口減少問題克服の国民的運動を進めていく」とする宣言を採択しました。


▶ 山梨県の開催報告はこちら:
「日本創生に向けた人口戦略フォーラム in やまなし」開催報告 ― 若者・女性にも選ばれる地方を目指して『やまなし宣言』を採択

▶ アーカイブ映像はこちら:
日本創生に向けた人口戦略フォーラム in やまなし

一人ひとりが当事者意識を

同様のフォーラムは昨年12月(鳥取市)、今年1月(仙台市)に続いて3回目。
山梨県内外から約700人が参加しました。

冒頭、フォーラム実行委員長の長崎幸太郎・山梨県知事があいさつしました。
人口減少問題について「今を生きる私たちは、将来世代に持続的な社会を引き継いでいく責務がある。一人ひとりが当事者意識を持ち、行動していかなければならない」と参加者に呼びかけました。

続いて、「未来を選択する会議」共同代表(議長)の三村明夫氏(日本製鉄名誉会長)があいさつしました。
三村氏は、「行動如何で未来は変えられる」との認識の下、未来を選択する会議が10月27日に発足したことを説明しました。
その上で、人口減少対策は「ビジョンを持ち、そこをめざして粘り強く一貫して長期間、継続していく。必ず成果が上がるとポジティブな考えを持つことも必要だ」と強調。
これまでの人口減少対策の反省点として、危機意識の共有や若い世代へのアピール不足などを挙げ、人口減少問題は「危機意識を共有し、行動することによってのみ解決できる」と訴えました。

さらに高市早苗首相がメッセージを寄せ、「人口減少は、喫緊の国家的課題」として「私たち一人ひとりが『自分事』としてこの課題に向き合い、行動することが不可欠」と指摘しました。
政府としても11月18日に人口戦略本部を設置し、人口減少対策を総合的に推進する決意を示しました。

フォーラムでは、
シンポジウム①:関東各都県知事・副知事による「希望の未来を叶える住まいと住環境の整備」
シンポジウム②:山梨で活躍する女性たちによる「女性が地方で活躍する社会を創るために」
シンポジウム③:経営者たちによる「人材希少社会における人的資本経営」
という3つのシンポジウムを開催。
人口減少対策について多角的に議論を深めました。

人口減少時代における国・地方の役割分担を見直すべき
シンポジウム①「希望の未来を叶える住まいと住環境の整備」

シンポジウム①では、関東ブロックの4県の知事、6都県の副知事がパネリストとして登壇しました。
コーディネーターは、未来を選択する会議共同代表/野村総合研究所顧問の増田寛也氏が務めました。

「寛容な社会づくり」が重要

最初に、山梨県の長崎幸太郎知事が発言。
調査結果をもとに「現在は、年収が500万円に達するまで子どもを持たない」とし、「県民所得の着実な向上」へ
①賃金水準の持続的な引き上げ
②生産性の向上
③労働参加率の向上
という3本柱を掲げ、山梨が全国の先頭になって挑戦していると話しました。
さらに、調査によると「良好な住環境と出生率との間には正の相関関係がある」と指摘。
「汎用性のある住環境基準の設定や全国に横展開するモデルの実証実験に国も参画を」と訴えました。

長野県の阿部守一知事は、信州未来共創戦略について説明しました。
信州未来共創戦略は、「寛容な社会づくり」「移住・つながり」「分散→集住・楽しいまち」「経営等の革新」が柱となっています。
阿部知事は「中でも『寛容な社会づくり』が重要。これは行政だけではできない」と指摘しました。

栃木県では今年4月、官民協働で人口減少問題を議論する「栃木県人口未来会議」を設置。
福田富一知事は、出生率の向上・転出超過の解消に向けて取り組むべき64項目のアクションプラン「人口減少対策マンダラ(曼荼羅)チャート」を作成するとともに、「とちぎ人口減少克服宣言」をまとめたことを紹介しました。
子育て世帯の住まい確保支援として各種助成制度の充実や東京圏での結婚支援に力を入れていることも言及しました。

奪い合いではなく、全体で増やす

千葉県の熊谷俊人知事はデータに着目。
高出生率で注目される流山市・印西市の数値を示し、「第1子・第2子は多いが第3子は少ない」と指摘しました。
「人口は各県による奪い合いではなく、全体で増やす方策を考えたい」と話しました。

東京都の松本明子副知事は、都の出生率に下げ止まりの兆しがある(2025年前期の概数。10年ぶりの増加)ことを紹介しました。
東京都は子どもを産み育てられるよう子育て支援を推進しており、都内男性の育業取得率は9年間で10倍以上(24年は54.8%。都では「育休」ではなく「育業」と呼称)、都内子育て世帯の約9割は「子育てしやすい」と実感しているといいます。
松本氏は「ライフステージに合わせた切れ目のない支援」の必要性を強調しました。

茨城県の岩下泰善副知事、群馬県の津久井治男副知事、埼玉県の堀光敦史副知事、神奈川県の首藤健治副知事、静岡県の平木省副知事も、それぞれの県の住環境整備策などを紹介しました。

全国知事会会長でもある長野県の阿部知事は、人口減少問題について「国がエビデンスを研究・分析していくことが大事。人口減少時代における国と地方の役割分担を見直すべき」と提案しました。

最後に、コーディネーターの増田氏が「(人口減少対策は)データに基づき、それぞれの立場で自分事化してしっかり取り組むことが大事だ」と議論をまとめました。

誰にとっても生きやすい世の中に
シンポジウム②「女性が地方で活躍する社会を創るために」

シンポジウム②では、ササキ代表取締役の佐々木啓二氏、山梨県障害者文化展で2年連続最優秀知事賞受賞の田中千晶氏、YSKe-com第一ソリューション部課長の勝美希氏、山梨専門インフルエンサーのMomoka氏が登壇しました。
コーディネーターはヒトスパイス代表取締役の野本知里氏が務めました。

若い人には「伝わっていないだけ」

Momoka氏は、特産品や伝統工芸品など山梨に特化した地域情報を発信。
「山梨は宝の山」といい、「若い人は『山梨にはなにもない』というが、『知らないだけ、伝わっていないだけ』。私が間に立って若い人たちに情報を伝えられないかと考えている」と話しました。

24歳で結婚、26歳で出産、34歳で病気によって手足が不自由になった田中氏は、10年ほどの“引きこもり生活”の後、口に筆をくわえて絵を描き、個展を開くまでに。
ボッチャの選手としても活躍中です。
田中氏は「一生懸命に取り組めることを見つけた時、人は輝ける」「(障がいを持つ)私たちが生きやすい世の中は誰にとっても生きやすい世の中ではないか」と語りました。

女性活躍で「働きやすい会社」に

課長昇任を打診されても不安で仕方がなかったという勝氏は、女性管理職創出を後押しする山梨県のプログラム「やまなし女性Miraiクエスト」に参加して意識が変化したといいます。
「自分らしいリーダーシップ像を確立できた」と振り返りました。

電子機器組立などを行うササキは現在、全従業員数395人のうち女性比率は53%、女性管理職も32%です。平均年齢は39歳。
佐々木氏は、短時間勤務制度や不妊治療受診時の特別有給休暇付与など女性活躍推進に関する取り組みを充実させたことを説明しました。
「働きやすい会社」というイメージにより採用にメリットが生じているといいます。
佐々木氏は「若手と女性に支えられている会社」と話しました。

ミッション・ビジョンが腹落ち
シンポジウム③「人材希少社会における人的資本経営」

シンポジウム③では、インディードリクルートパートナーズ上席主任研究員の宇佐川邦子氏、旭陽電気代表取締役社長の金山雄一郎氏、山梨経済同友会代表幹事の長澤重俊氏、連合山梨会長の杉原孝一氏、山梨中央銀行代表取締役頭取の古屋賀章氏がパネリストとして登壇しました。
コーディネーターは内閣官房全世代型社会保障構築本部総括事務局長の山崎史郎氏が務めました。

若者に選ばれる会社

金山氏は、リブランディングや独自のウェルビーイング事業「WELL LABO」を展開。
従業員一人ひとりが気持ちよく働ける環境を整備し、従業員の幸福度向上のための機会を創出していることを説明しました。
現在、全従業員(347人)のうち20代以下は113人(32.5%)で、金山氏は「若者に選ばれる会社になっている」と語りました。

長澤氏は、昨年秋に設置した山梨経済同友会の「人口減少対策部会」について説明しました。
働き方改革や、銀行と協力して人口の社会増をめざしているといいます。

人をコストから「資本」へ

古屋氏は、同銀行の人的資本経営への取り組みとして人的資本戦略やエンゲージメント向上戦略、ダイバーシティ推進チーム「COLORS」を推進していることを紹介しました。
これらで「企業価値の持続的な向上」「従業員の働きがいの向上」「モチベーションの向上」をめざしています。

杉原氏は、エッセンシャルワーカー(医療、介護、保育など)における深刻な人手不足と労働環境の厳しさを指摘。
「人材確保と同時に、安心して働き続けられる環境づくりが急務」とし、「人をコストから資本へ」と訴えました。

宇佐川氏は、人材育成から始まり売上向上・賃上げにつなげている地方の三つの企業の実例を紹介しました。
「共通するのは人材を大事にして、(従業員に)ミッション・ビジョンが腹落ちしていること」とポイントを話しました。

最後にコーディネーターの山崎氏は、「若者は(企業を)合理的に選んでいる」と指摘。これまでのルールを決めたシニア層・リーダー層がマインドを変える必要性を述べました。

若者・女性にも選ばれる地方に

フォーラムでは最後に、「日本創生に向けた『やまなし宣言』~若者・女性にも選ばれる地方になるために~」を採択しました。
宣言では、
「誰もが安心して子どもを産み育てることができる地域、多様性と成長力を備えた持続可能な地域の実現に向けて積極的に活動する」
「積極的な投資と、物価高にも揺るがない確かな生活基盤を築くための所得向上を通じて、『頑張れば報われる社会』を当たり前にしていく」
「人口減少問題に目を背けることなく、一人ひとりが自分事として考え、日本創生の実現に向けて行動していく」
の3つを柱に、「関東ブロックから日本を変えることを誓い、日本創生に向けた人口減少問題を克服するための国民的運動をさらに進めていく」としています。