【開催報告】「日本創生に向けた人口戦略フォーラム in ながさき」
「若者・女性にも選ばれる地方になるために」をメインテーマに掲げ、人口減少問題への対応策を考える「日本創生に向けた人口戦略フォーラム ㏌ ながさき」が12月21日、長崎市で開催されました。
フォーラムには、九州・沖縄各県知事や地域の活性化に取り組む経営者らが参加。
人口減少対策を軸に、産業振興や多様な人材が安心して活躍できる地域づくりについて議論しました。
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「日本創生に向けた人口戦略フォーラムinながさき」を開催|長崎県
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日本創生に向けた人口戦略フォーラム in ながさき
産業振興や豊かな地域づくりで連携
「人口戦略フォーラム」は昨年度から全国各地で開催していますが、九州・沖縄地区では初めての開催となりました。
本フォーラムは、鶴鳴学園 長崎女子高等学校 龍踊部による「龍踊り」でスタート。
あいさつでは、高市早苗首相がメッセージを寄せ、政府の人口戦略本部で人口減少対策を推進する決意を示しました。
続いて、実行委員長の大石賢吾・長崎県知事は「人口減少社会の中でも、国民一人一人が豊かさを実感し、成長を続ける地域デザインを作り上げていく方策について、九州から全国に向けて力強く発信したい」とあいさつしました。
そして、「未来を選択する会議」共同代表(議長)の三村明夫氏(日本製鉄名誉会長)は、「人口減少を緩和しつつ、多様性と成長力を兼ね備えた持続可能で活力のある社会を構築するため、あらゆる努力を行う決意が必要」と述べました。
その後のパネルディスカッションでは、
テーマⅠ:日本の地方創生を牽引する「九州はひとつ」の取組
テーマⅡ:若者や女性が安心して働き、暮らせる地域となるための取組
テーマⅢ:地域のポテンシャルを活かし、付加価値を生み出すための取組
という3つの視点で議論が行われました。
パネルディスカッションⅠ
「日本の地方創生を牽引する『九州はひとつ』の取組」
パネルディスカッションⅠでは、九州・沖縄の6知事と九州経済連合会名誉会長の倉富純男氏(西日本鉄道代表取締役会長)が登壇し、「九州はひとつ」という思いのもと、広域連携の強化が打ち出されました。
各県が個性や強みを磨きながら、子育て支援や交通網整備、地域産業の活性化に取り組み、安心して暮らせる土台づくりを進めていくことで一致。
「稼ぐ力」の強化のため、半導体産業の推進やGX(脱炭素)、ベンチャー支援などを軸とした「九州創生アクションプラン」(25年度開始の第3期)の具体像が示されました。
コーディネーターは、未来を選択する会議共同代表/野村総合研究所顧問の増田寛也氏が務めました。

発言要旨
倉富純男氏は、「各県と経済界が人と予算を出し合い、『九州創生アクションプラン』を推進する動きは、全国的にも誇れるものだ」と述べました。
アクションプランでは、半導体、ベンチャー支援、子育て、防災・減災、食など7つのプロジェクトを推進する考えを示しました。
大石賢吾・長崎県知事は「最先端技術や規制改革も活用し、これまでにない社会像をつくる」と語り、ドローン物流の先行的実証や大阪・関西万博での九州合同PRなど、挑戦的な取り組みを報告しました。
河野俊嗣・宮崎県知事は「合計特殊出生率は全国上位。スポーツ合宿、大会を成長の牽引に、高速道路整備のほか、人口100万人前後のターニングポイントに備える。適応と成長の両睨みで戦略展開する」と述べました。
オンライン参加の木村敬・熊本県知事は、半導体産業の集積を背景に「新生シリコンアイランド九州」構想や産学連携拠点整備を説明。
「産業の成長も人づくりが土台。『子どもまんなか』の視点で、国内外から選ばれる熊本・九州をつくりたい」と訴えました。
佐藤樹一郎・大分県知事氏は、大火災からの復旧支援への感謝を述べたうえで、「人口100万人維持を目標に、出会いの場づくりから保育料負担軽減、外国人材の生活支援まで、自然増と社会増の両面から人口対策を進める」と強調しました。
塩田康一・鹿児島県知事は、名産品の輸出促進や農林水産業と子育て支援を軸にした戦略について、「若者が誇りを持って就農し、観光や食品産業と結びついた稼げる一次産業をつくることが重要だ」とし、若手農家への継承や販路開拓、生産体制整備に力を入れると説明しました。
オンライン参加の玉城デニー・沖縄県知事は、多くの有人離島、離島自治体を抱える県内では、少子高齢化が急速に進んでいる現状を説明。
「結婚・出産・子育て環境の整備やDXによる生産性向上を加速していく」と話しました。
増田寛也氏は、最後に「九州の強みを伸ばし国の施策とも連動し、男女が活躍できる九州モデルで日本の人口戦略を牽引すべきだ」と結びました。
パネルディスカッションⅡ
「若者や女性が安心して働き、暮らせる地域となるための取組」
パネルディスカッションⅡでは、長崎市長の鈴木史朗氏、未来を選択する会議共同代表/陽と人代表取締役の小林味愛氏、移住者/ながさきワーケーションガイドの帯屋明奈氏、くるのわデザイン代表取締役の岩本諭氏の4名が登壇。
働き方、育児、居場所づくりなど、チャレンジしやすい環境づくりに関する意見交換が行われました。
コーディネーターは、内閣官房全世代型社会保障構築本部総括事務局長の山崎史郎氏が務めました。

発言要旨
鈴木史朗市長は「長崎駅周辺再開発やスタジアムシティ、西九州新幹線開業など、100年に一度のまちづくりのチャンスの只中にある」と強調。
経済再生、少子化対策、新市役所創造の3つを優先プロジェクトに掲げ、「子育て世代が安心して暮らせる環境を整え、経済と人口の好循環を生み出したい」と語りました。
小林味愛氏は、自身の経験を踏まえ、「これまでの仕組みに、女性や若者を無理やり当てはめるのではなく、入ってこられなかった人の側から制度をつくり直す発想が必要だ」と訴えました。
さらに「『若いから』『女だから』と決めつけず、対話を受け止めてほしい」と呼び掛けました。
東京都出身で、夫の転勤を機に長崎へ移住した帯屋明奈氏は、働き方と子育ての両立の難しさについて、「土曜出勤の会社が多く、日曜だけ休みだと負担が大きいと感じる」と語りました。
一方で、「自然にすぐ行けて、人が温かい長崎の暮らしは大好き。子育て支援のおかげで2人目を産もうと思えた」と魅力も挙げました。
斜面地の空き家を改修し、若者の拠点づくりを行う岩本諭氏は、坂の町の価値を強調。
「港、森、山、斜面地から徒歩20分圏内のコンパクトシティは貴重。都会から歩いて10分の『ちょうどいい田舎』だ」と語り、「仕事だけでなく、若者が『ここにいていい』と思える居場所が足りない。チャレンジを応援する大人が増えれば、定住も進む」と述べました。
会場では「長崎のピンチをチャンスに変えられると思うか」というアンケートも実施され、多くが「できる」と回答。
鈴木市長は「期待の大きさを改めて感じた。行政だけではなく、市民、企業、大学が一丸となる『オール長崎』で人口減少に立ち向かいたい」と応じました。
パネルディスカッションⅢ
「地域のポテンシャルを活かし、付加価値を生み出すための取組」
パネルディスカッションⅢでは、草草社代表の有川智子氏、平山旅館女将の平山真希子氏、丸徳水産専務の犬束ゆかり氏、雲仙福田屋代表取締役の福田努氏、LION SHOUT代表取締役社長/FUNKISTボーカル&リーダーの染谷西郷氏の5名が登壇しました。
コーディネーターは、WAmazing代表取締役社長/Onwards取締役副社長の加藤史子氏が務めました。
討論の中では、離島や半島における暮らしの質を高める工夫や、観光振興の取り組みなどが紹介されました。

発言要旨
五島市福江島の有川智子氏は、放課後児童クラブ、古民家宿を整備し「暮らしの質」と「デザイン」を両立してきました。
民間の挑戦が新旧建築群を生み、人口推計を上振れさせた背景には「住まいの質」という明確な核があると指摘。
「世界が変わる島思考」を広げ、受け皿整備と空き家不足解消へ踏み出すと語りました。
壱岐市の平山真希子氏は、豊かな食資源と風景という強みの一方、夏冬4倍の需要格差がもたらす不安定さを課題としました。
壱岐湯本温泉の認知向上やコスメ開発、温泉総選挙上位入賞で形成した応援団を活かし、「夏の来訪を冬へ回帰させる設計」を提示。
長崎三温泉連携による面の誘客、通年型のイベント化、観光組織の一体運営が次の鍵だとしました。
対馬市の犬束ゆかり氏は「課題は見方次第で資源になる」と強調しました。
漁師ガイドツアーは年間5千人超を受け入れ、企業研修や教育旅行で広がりを見せています。
休眠施設のゲストハウス転用や新たな魚食文化の創出など、「あるもの活用」の積み重ねが地域の基盤を強くするといいます。
生ごみ堆肥化や環境教育、移住者定着の伴走の重要性も語られました。
雲仙市の福田努氏は、地熱や歴史資源を背景に「質で選ばれる地域」を目指す取り組みを紹介しました。
農家との直接連携で料理の価値を上げ、給与や離職率改善につなげたほか、資格取得支援と多文化共生で人材育成を推進。
「親がワクワクする経営姿勢が若者を呼ぶ」と語り、スポーツツーリズムとの連動で滞在価値を伸ばす構想を示しました。
染谷西郷氏は、討論前に「V・ファーレン長崎」の応援歌「V-ROAD」を熱唱しました。
長崎の核心的価値を「日常の愛しさ=平和の物語」と表現し、音楽とスポーツがその象徴であり、スタジアムやフェスの物語が誇りを育てると語りました。
九州から日本を変える
最後に「九州ブロックから日本を変えることを誓い、日本創生に向けた人口減少問題を克服するための国民運動をさらに進めていく」とする「ながさき宣言」を採択しました。
長崎は、「出島」に象徴されるように、江戸時代から世界とつながり続けた国際都市としての誇りを受け継ぐ場所です。
坂本竜馬が志を抱き、未来を見据えた舞台でもあり、その挑戦の精神は今もまちの空気の中に息づいています。
人口減少をただのピンチと捉えるのではなく、持続可能な豊かさを生み出すチャンスとして前を向く九州ブロックは、かつて世界に開かれていた長崎の精神と重なり、希望の灯りを未来へとつなぎました。
