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【開催報告】「未来を選択する会議」発足記念イベント

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2025.11.27

日本生産性本部が事務局を務め、民間主導で人口減少問題に取り組む「未来を選択する会議」は10月27日、都内で発足会を開催し、正式に発足しました。
今後は、シンポジウムやセミナーの開催、関係者との対話・交流、情報発信、調査研究などを通じて、国民運動としての気運醸成に取り組みます。


「未来を選択する会議」が正式発足
若者や女性の声を政策に反映させよう

この日は、発足記念シンポジウムを開き、人口減少問題への取り組みについて意見表明しました。
未来を選択する会議のテーマは、「人口減少時代の生き方、くらし方、働き方を考える」。
本格的な人口減少時代に突入する日本において、多様性と成長力を兼ね備えた持続可能で活力ある社会の構築を目指します。
社会全体の構造や意識の改革に向け、すべての人が主体的に関わる社会の気運醸成を目指し、経済界、労働界、地方自治体、子育て支援などを行う関係団体、学識者、若者世代など幅広いステークホルダーが参画する民間主導の取り組みです。

発足会であいさつした日本生産性本部会長の小林喜光氏は「日本生産性本部では、人口減少問題への対応は、国家の最重要課題のひとつであり、また、生産性運動の基盤に関わる重要なテーマであると考えています。こうした認識のもと、新たな国民運動組織を立ち上げるべく、増田寛也副会長を中心に準備を進めてきました」と、「未来を選択する会議」の設立までの経緯を説明しました。

そのうえで、「少子化の背景には生き方、くらし方、価値観の多様化、技術の進歩などがあります。今こそ、立場を超えて、国民の各界各層が共に考え、共につくる場が必要です。未来を選択する会議が、こうした対話と共創の出発点となることを心から期待しています」と述べました。

この後、発足会では、人口減少問題に関する国民運動組織設立準備委員会委員長の増田寛也氏が、「未来を選択する会議」の設立趣意書や会則、役員及び構成員、今後の活動計画などを説明しました。

同会議を代表し、会務を統括する共同代表には、日本生産性本部副会長の秋池玲子氏、増田寛也氏、芳野友子氏を含む6人が就任し、日本製鉄名誉会長の三村明夫氏が議長に選出されました。

また、同会議では、若者世代や女性との対話を促進するために、共同代表を兼ねる小林味愛氏を含めた7人からなる「未来に向けた対話チーム」を発足しました。

その他、同会議には、経済界、労働界、地方自治体、地域、子育て支援などを行う関係団体、学識者、若者世代など幅広い層が参画しており、メンバーは発足時約100人となりました。


「生き方」「くらし方」「働き方」見つめ直す

発足会の後、「未来を選択する会議」発足の記者会見を開催しました。
共同代表の6人と、未来に向けた対話チームのメンバーの池本氏、越智氏、山本氏が出席しました。

共同代表・議長の三村明夫氏は、「この会議の重点は、若者世代が何を考え、悩んでいるのかについて耳を傾けることだ。そのために、未来に向けた対話チームの活動に期待している。生の声を土台にしたうえで、若者や女性に刺さるような政策提言をしたい」とあいさつしました。

また、同会議共同代表で未来に向けた対話チームのメンバーでもある小林味愛氏は「私たちの役割をひと言で表すと、『現場のリアルな声を会議に届け、政策に反映させる橋渡し役』だ。今年度は対話をインフラにして、全国で温かい対話の場が生まれていくことに取り組み、来年度からは、仲間を増やす取り組みも始めたい」と意欲を表明しました。

この後、共同代表の増田寛也氏が同会議の設立趣旨や今後の取り組みなどを説明しました。


「私たちは未来を変えられる」

 「未来を選択する会議」発足記念シンポジウムでは、高市早苗内閣総理大臣のメッセージが披露されました。
人口減少と少子化に対し、「望ましい社会をどう築いていくかについて、自らが主体的に関わり、共に考え、共に行動していくことが、今まさに求められている」と指摘しました。
そのうえで、「『未来を選択する会議』が、その先導的な役割を担うことを期待している。様々な取り組みが、経済界、労働界、地方自治体など社会のあらゆる分野や、若者世代をはじめとする全世代をつなぎ、活力ある社会の実現に向けて、新たな気運を生み出す力となることを心から願っている。政府としても一人ひとりが明日に希望をもてる社会の実現に取り組む」と表明しました。

心に響いた「子どもは育つ」

第一部の若者世代からのメッセージ「未来に向けて、いま私たちにできること」では、未来に向けた対話チームの6名が登壇し、これまでの取り組みを共有するとともに、人口減少社会についてメッセージを投げかけました。 

「未来を選択する会議」共同代表で、陽と人代表取締役の小林味愛氏は、国家公務員として業務を経験した後、東日本大震災がきっかけで転職し、その後、福島県国見町に陽と人を立ち上げました。
「立場によって見える景色が違う。福島の桃を路上で売ることから始めたが、一円を稼ぐのがこんなに大変なんだと気づいた」。

また、小林氏は、そのころから「女性ならではの壁」にぶち当たりました。
「悪気はないとは知りつつも、『子どもを産むことは社会貢献』や『早く産んだ方がいい』などと言われ、自分の中に社会に対する抵抗心が芽生えていった」。

「子どもは産まない」と心に誓った小林氏の頑なな気持ちを溶かしたのは、5人の子どもを育てる地元の女性の言葉でした。
子育ての苦労を聞く小林氏に対し、女性は「子どもは育てるのではなく、育つものだ」と笑いました。

その後、小林氏は家族を持ち、子宝にも恵まれ、一緒に経営する仲間も増えました。
小林氏は「社会のすき間や制度の狭間に向き合い、未来は変えることができる。以前の主語は『私』だったが、今は『私たちは』という感覚でいる」と話し、「未来を選択する会議」を舞台に、現場の声を政策に反映させる役割を果たす決意を表明しました。

子育て体験通し意識変容促す

特定非営利活動法人manma代表理事の越智未空氏は、若者が多様な家庭に触れ、生き方を考える「家族留学」を全国で展開し、これまでに1,000人以上に提供しています。
また、自治体や教育機関と連携し、キャリアと家庭を主体的に描く力を育むライフデザイン支援を推進しています。

越智氏は「20代が抱える不安は、統計だけでは見えません」と話します。
ネガティブな情報が拡散されやすいSNSを見て、「実家から離れた場所では共働きで子育てをするのは難しい」や、「家庭を持ったら自分の時間が無くなる」などリアルな不安に覆われているといいます。

そうした若者に対し、「家族留学」という体験・対話を通し、具体的なヒントを提供し、ポジティブな意識変容を促しています。
「マクロ政策も重要ですが、体験型のライフ支援プログラムのようなミクロの取り組みも重要だ」と訴えました。

若者福祉に内部留保活用して

若者支援全国ネットワーク協議会呼びかけ人の池本修悟氏は、大学進学時にNPOを起業し、NPOの事業サポートや社会活動を行う人たちのネットワーク化などに取り組んでいます。
2017年に首都圏若者サポートネットワークを立ち上げ、虐待・貧困などで親を頼れない若者を支援する助成事業や政策提言を推進しています。

池本氏は、進学や就労、ヤングケアラーなど若者が直面する課題に対し、自立した社会生活を送れるように支援する「若者福祉」の対策が遅れている日本の現状を指摘しました。
「企業の内部留保などを活用して、『若者おうえんファンド』をつくり、企業や団体が資金を出しやすいようにして、若者福祉への戦略的投資を促すことが重要だ」とアイデアを披露しました。

若者たちが本音を語れる場に

地方女子プロジェクト代表の山本蓮氏は、2023年に経済産業省採択事業「未踏的女子発掘事業GRIT」に参加し、「地方女子プロジェクト」を開始しました。
地方での女性流出の問題に当事者のインタビューを通じ、本音を発掘するSNSを運営しています。
山本氏は、「地方から女子が流出する背景を大人は把握していない。『結婚・出産の圧を感じる』『地域の女性の役割が息苦しい』など、彼女たちの本音を聞き出せていないからだ」と話しました。

このままでは2050年の地方では、女性たちは楽しいコミュニティを作っているのに対し、男性たちは孤立化すると予測しました。
「若者たちがハードルを感じることなく、自分の声を出せる場所を作っていきたい」といいます。

「聴く」姿勢で対話が活きる

エール取締役の篠田真貴子氏は2020年からエールに参画し、社外人材によるオンライン1on1で企業の組織改革を支援しています。
篠田氏は、対話を進める際に「聞く」と「聴く」の違いを理解することの重要性を示唆しました。

自分の判断・評価を入れて「聞く」よりも、判断・評価を入れない「聴く」姿勢を取ることで、他者との対話を通して自己を再認識し問題解決の糸口が見え、「聴かせてくれてありがとうという気持ちになる」といいます。

国と地方の役割分担見直しを

第二部のパネルディスカッション「人口減少時代の生き方、くらし方、働き方を考える」では、長野県知事で全国知事会会長の阿部守一氏、日本総合研究所シニアフェローの翁百合氏、中央大学法学部教授の宮本太郎氏、マルハニチロユニオン中央執行委員長の白山友美子氏がパネリストとして登壇しました。

コーディネーターは「未来を選択する会議」共同代表の増田寛也氏が務めました。

人口減少に対する基本認識や課題について、阿部氏は「人口減少は、個人から見ると、活躍できるチャンスが増える。新しい発想、新しい視点で社会全体のパラダイムチェンジを進めることが大事だ」と話しました。

翁氏は「人への投資や女性の潜在力の発揮が鍵だ。労働人口が減っても、労働の質を高めることで付加価値を高め、生産性の向上につなげていくことが求められている」と指摘しました。

宮本氏は「若い世代の価値観の変容に寄り添うことが重要だ。SNSでは、不安を煽る情報が散乱し、若い世代が結婚や子どもを持つことにナーバスになっている。その悩みをチャッピー(チャットGPT)に相談している」と危機感を示しました。

白山氏は「マルハニチロでも、人手不足の影響を受けて転職が増えている。今は新卒採用されて、すぐに転職サイトに登録するのが当たり前だ。労働組合としては一人ひとりに向き合っていくことが求められている」と話しました。

そして、「未来を選択する会議」との連携については、「人口問題は東京と中山間地域ではいささか違う。全国津々浦々の声を伝えたい」(阿部氏)、「白書をつくるなどプラットフォームとしての機能に期待している」(翁氏)、「子育て支援策としての給付付き税額控除を政府に訴えてもらいたい」(宮本氏)、「対話の中で不安の原因を見つけることが大事だ」(白山氏)などの声が上がりました。